トラックドライバーのキャリアパスについて、真剣に考えている人、物流会社が、どれほどあるのでしょうか。
これはとても難しい課題です。
なぜ難しいのか、簡単ではありますがひも解きたいと思います。
去る8月8日、国土交通省が第3回「物流問題調査検討会」を開催しました。
http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000053.html
この内容は、物流に係る方であればぜひご一読されることをおすすめします。ここ最近発行された資料の中で、現在の物流状況をもっとも分かりやすくまとめられているかと思います。
当該検討会の中でも、人不足の問題が大きく取り上げられています。
「第2章 経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題
1.女性の活躍、教育再生を始めとする人材力の充実・発揮
(3)複線的なキャリア形成の実現など若者等の活躍促進」
http://www.mlit.go.jp/common/001050729.pdf
「複線的なキャリア形成」というのは興味深い表現です。
逆に言えば、「直線的なキャリア形成」では、「若者等の活躍促進」を実現できない、もしくは実現は難しいと、同検討会でも考えているのではないでしょうか。
そもそも。
運送会社におけるキャリアパスは、ドライバー>(内勤)>配車マン>所長...というのが一般的かと思います。ところが、このキャリアパスには大きな問題があります。
ドライバーの数に対し、配車マン、所長といったその後の上位キャリアの絶対数(席数)があまりに少ないことです。これは運送会社の構造上、非常に難しい問題です。
例えば、運行管理者は29台までは一人で良いというのが『貨物自動車運送事業法』上の決め事。決め事を抜きにしても、一人の配車マンは、(運送会社の規模にもよりますが)平均20台程度は担当しているのではないでしょうか。それ以下の台数だと、社長が配車を兼務しているケースが多いかと思います。
逆に言えば、20名ドライバーがいても、配車マンに出世できるのは20名に一人。
その他、営業所長や、事務、サブ配車マンがいたとしても、仮に20台のトラックを動かす、ひとつの営業所での管理/事務系職種の人数は5名程度。
つまり、出世できるのは4名のうち一人程度。四分の三の確率で、ドライバーは、ドライバーのまま会社員人生を終える概算となります。
ちなみに。
以下資料によれば、従業員1000名以上の企業で、部長職の50代の割合は19.6%。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/2011/shuukei_bunseki/data/bunseki12.pdf
言い方が悪いかもしれませんけど、ドライバーの平均年齢が50歳を超えている運送会社なんて、いくらでもありますからね。
これから世間に出ようという若者が、
「運送業界って、3/4の人は出世できずに一生ドライバーで終わる業界だから」
と言われて、夢と希望を持ってこの業界に入ってくるでしょうか?
無理がありますよね。
だからこそ、前述の「物流問題調査検討会」では、「複線的なキャリア形成の実現」が必要であると結論しているのでしょう。
「複線的なキャリア」については、運送会社が運送業務単体で生きていこうとすれば、これは実現不可能でしょう。運送会社には、直線的なキャリア、つまりドライバー>配車マン>所長...の出世コースしかないのですから。
3PL、倉庫、物流加工、物流不動産、コンサル、物流システム...
業務そのものを多角化し、職務、役職ポストを増やすしかありません。
運送会社が運送業務にとどまる限り、人不足など解消のしようもありません。
だって、構造的に魅力がないのだから。
このことを、もっと運送会社は自覚すべきだと強く考えます。
ただし、別な考え方もあるんですけどね。
それは、また別の機会に書きたいと思います。
※加筆 2014/10/11
本問題について、後編を書きました。
逆転の発想が運送会社の人材不足を救う!<トラックドライバーのキャリアパス(後編)>
別の切り口から、運送業界の人不足問題を論じています。
あわせてお読みいただければ幸いです。