配車マンの資質 ②

前回、ドライバーを配車マンに引き上げた某社の失敗談を書いた。

とは言っても、世の大半の配車マンは、ドライバー出身である。

 

今回は、ドライバー未経験者を配車マンに抜擢した例を書きたい。

 

その運送会社では古参の配車マンが辞めて以来、後任の配車マンが定着せずに困っていた。理由はだいたい前回書いたことと同じなのだが、ドライバーを配車マンに引き上げても、そのうちドライバーに戻りたいと言い出す。仕方ないので、当人をドライバーに戻し、別のドライバーを配車マンにするも、やはりしばらく配車業務を行うと、ドライバーに戻りたいと言い出す。

こうなるともうどうにもならない。既に「言い出せばドライバーに戻れる」という前例を作ってしまっているので、元ドライバー(現配車マン)の言い分を無下にすることもできない。

 

困った社長は、配車マンどころか、ドライバー経験すらもない、というか運送会社で働いたことすらない人間を新たに中途採用し、配車マンに据えた。

 

結果、この試みは成功。

古参のドライバーたちも、意外とすんなりこの新任配車マンを受け入れたとのこと。

 

新任配車マンを辞めさせたら、自分たちの誰かが結局配車マンをやらなければならない、というのもあるだろう。ただ、もちろんそれだけが理由ではない。

 

ひとつは、ドライバーたちの持って生まれた気質があると思う。

職業ドライバーは、基本マジメである。朝早く出勤しなければならないし、厳しいコンプライアンスのため、前夜の深酒はもちろん、夜遊びも現実的にはほとんどできない。見かけは一見怖い(ごめんね)人も多いが、その本質は誠実な人が多い。

これは僕も経験していることなのだけれども。彼らは、仲間内、つまりドライバー同志では、けっこうきついことも言い合うが、基本的に肩書に弱い。業界的に先輩後輩の関係も厳しい、つまり体育会系の傾向もあるし、彼ら生来の生真面目さが成す結果と言える。

つまり新任とは言え、「配車マン」に逆らうことはしない、もしくはしにくいのだと思う。

(注:ドライバー上がりの新任配車マンが、ドライバーたちにいじめられるのは、元仲間だから)

 

もうひとつ理由がある。

それは、この新任配車マンが、客観的な説得力を持った配車を行う能力を持ち得ていたこと。

実は、この新任配車マンは、前職で情報システム部に勤務していた。つまり、PC、ITスキルに長けた人材であった。

 

新任配車マンは、配車を考えるうえで、GoogleMaps等を利用し、配送先間の距離と所要時間をきちんと計算しておく。過去の配車をデータとして蓄積し、ドライバーごとの歩合や拘束時間等をきちんと把握しているため、不公平が少ない。

下手にドライバー経験がないため、配車の根拠をITに求める。配車に文句を言うドライバーたちも、根拠をきちんと示されると反論しにくいことが、功を奏したのだと考えられる。

 

とは言え、この新任配車マンが、有為の人材であったことはもちろんだろう。

だが、考えて欲しい。

運送業界に限ったことではないが、異業界出身者を軽んじる傾向があるのは事実。

だがこれは、異業界出身者のスキルをうまく使いこなした好例ではないかと思う。

 

配車マンの話、もうちょっと次回以降も続けますね。