地方都市の可能性

『街って、こんなに違うんだね』

 

今年のゴールデンウィーク、私は妻とともに自転車旅に出ました。

この言葉は旅二日目の夜、愛知県豊橋市の豊橋駅西口を、コインランドリーと夕食を求めて歩いていた時に、妻が発した言葉です。

 

今回は、4泊5日の自転車旅道中に感じたことを、備忘録を兼ねて書き残しておきましょう。

今回宿泊した各地と、筆者の住む東京都練馬区の人口をさっくりと比較したもの。クリックで元データとなるスプレッドシートおよび出典が確認できます。
今回宿泊した各地と、筆者の住む東京都練馬区の人口をさっくりと比較したもの。クリックで元データとなるスプレッドシートおよび出典が確認できます。

引越屋あがりで、一時は全国を巡り歩く宿無しのような営業活動をしていた私と違い、妻はいわゆる観光地を巡る旅行しかしたことがありません。

東京以外に住んだこともありません。

 

 

今回は、三重県津市からスタートし、伊勢神宮を詣で、鳥羽から伊良湖へフェリーで渡ってから、一路陸路を東へ走りました。

宿泊したのは伊勢市を除けば、豊橋、藤枝、沼津という、それなりに名の通った地方都市の駅前にあるビジネスホテルです。夕食はホテルではなく、街で食べることにしました。

豊橋市という、地理には決して明るくない妻でも知っている有名都市においても、駅前は閑散とし、夕食を食べられるような適当な店も少なく、少し歩けば住宅があるという事実。

毎夜見る地方都市の姿が、妻には新鮮だったのでしょうね。

 

私の住む練馬区の人口は、約72万人。対して、藤枝市の人口は約14万人、沼津駅の人口は約20万人。新幹線の停車駅がある豊橋駅ですら、練馬区の半分である約37万人の人口しかないのです。

 

誤解を恐れずに言えば、街の基本は住民です。

人がいるからこそ街は活性化し、人がいるからこそ産業が、そして商業が集い、そして税収が得られることによって、街は住民サービスを維持できます。

住民数の大小が、街の活気と直結するわけではありません。

しかし、関係がないはずもありません。

 

街をより活性化させるために、人を集めること。

少ないよりは多いほうが良いわけですから。

それは、観光であれ、産業であれ、多くの街が目指していることです。

 

 

『2040年までに、自治体の半数が消滅するかもしれない』

https://president.jp/articles/-/24791

 

日本創生会議の発表は、大きな話題となりました。

 

日本創成会議は2014年、次のような提言をまとめた。10年から40年の間に、20歳から39歳の若年女性の人口の減少率が5割を超える自治体を「消滅可能性都市」とし、さらに、総人口が1万人未満になる自治体について「消滅可能性が高い」と定義した。それによると、若い女性の人口が半分以下に減少する市区町村は全体(約1800)の5割にあたる896におよび、うち人口1万人未満になる523の自治体は、実際に消滅してもおかしくない危機にあることになる。

出典:プレジデントオンライン

 

そもそも高齢化と人口減を課題とする日本において、地方都市の未来は決して明るいとは言えません。

そして今の地方都市の姿は、20年後の東京の姿なのかもしれません。

 

 

暗い話ばかりを書いてきましたが、では地方都市に魅力がないかと言えば、それは違います。

 

今回泊まったココチホテル沼津のデザイナーズルーム。

コンペで募集し、採用された部屋なんだとか。

こういう尖った企画ができるところが、地方の底力じゃないかと感じます。

 

自転車で街を走れば、クルマと違ってより街を身近に感じることができます。

東京では考えられない広い庭を持つ家が立ち並ぶ住宅地。

物価は安いし、食べ物は美味しい。

東京では1時間以上も移動しないと味わうことのできない大自然が、すぐそこにある魅力。

 

そして、地方都市であるということを武器であり魅力として、新しいビジネスを展開していこうとする人々。

 

すべてのものがあるけれども、どこか閉塞感がある東京と違い、今回私たちが自転車で駆け抜けた太平洋岸の街々には、広い空、広い海とともに可能性が広がっているように感じます。

 

 

例えば駅前に、大容量のネット回線と充実のTV会議施設を備えたリモートワーク専門のコワーキングオフィスとか作れないですかね。

いや、駅前じゃないほうが良いかも。クルマでも気軽に通勤ができるような広くて安い駐車場を備えていることも、地方では必要でしょうし。そうなると、オフィスと最寄りの鉄道駅や空港までのバスもあるといいですね。

従業員が自分の好きな都市を選んで、リモートワークを選択できるとか。リモートワーク専門コワーキングオフィスを地方都市が運営し、それを望む企業とのネットワークがつながれば、おもしろいことになりそうです。

 

例えば、ある街のコワーキングオフィスは保育施設を併設していて、出産して子供が5歳になるまでは、子育て環境の良い地方都市でリモートワークで勤務するとか。

例えば、ある街のコワーキングオフィスはオリンピック選手育成レベルのトレーニング施設を併設していて、企業のアスリートに対する支援体制をフォローできるとか。

高齢者や持病を抱えるワーカーのために、充実した医療施設を併設したコワーキングオフィスなんていうのも、可能性がありそうです。

 

 

私は、私が理事を務める一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクトの関係で、自転車の利活用に拠る地方活性化のご相談を頂戴することもあります。これはこれで可能性のある試みではありますが、観光による集客には、やはり限界があります。

地方活性化の基本は、やはり住民を集め、ビジネスを活性化することではないでしょうか。

 

IT技術が進化し、かつリーズナブルになった今だからこそ、地方都市と大都市をつなぐリモートワークの実現可能性が高まっています。

ハード面での課題は、ほぼ解決されていると言っても良いでしょう。

後は、ソフト面での整備と理解が進めば、リモートワークはもっと拡大していくでしょう。

 

そして、リモートワークは、地方活性化における可能性のひとつだと思うのです。

 

 

私の仕事も、執筆だけであれば地方で働くことも可能なんですけどね。

コンサルティングの仕事を考えると、まだまだ東京からは離れづらいなぁ...

おまけ 今回の自転車旅ルート

今回自転車旅の行程。

自転車で実走行したルートを基本プロットとし、電車移動、船移動はプロットしていません。一部、歩行した軌跡も入っています。

初日は、三重県津市まで新幹線&近鉄で輪行し、伊勢神宮外宮を参拝。

翌日は、二見興玉神社を参拝後、伊勢神宮内宮を参拝。五十鈴川駅から輪行し、フェリーで鳥羽から伊良湖まで移動。その後、三河田原駅まで走行し、豊橋まで輪行。

三日目は、豊橋駅から藤枝駅まで輪行。前日、前々日も雨が続き、この日は自転車で走る気力が出ませんでした。

四日目は、藤枝から沼津まで走行。

五日目は、沼津から箱根越えし、小田原まで走行しました。