ニトリのネットショップがやばい...

ニトリのネットショップが、不具合を起こしているようです。


本来、同ネットショップは、6月17日にサイトリニューアルされ、公開されるはずでしたが、リニューアル後発覚した不具合により、本記事作成時点で6日を経過しているにもかかわらず、Webサイトをクローズした状態が続いています。

 

原因は、リニューアルの目玉であった配送計画システムとの連携に問題がある可能性があります。

今回は、ニトリの特徴的な物流運用体制を取り上げつつ、本件不具合とシステム企画開発の「自前主義」について考えます。

本ブログを書いている、2015年6月23日 深夜1時時点で、ニトリのネットショップは、このような状態にあります。


システム開発やら、Webサイト制作やらの業界の末席を汚す僕としては、このような状況を見ると...


いたたまれないような気持ちになるとともに、「自分の案件じゃなくてよかった...」というドキドキ感も感じています( ̄。 ̄;)


さて、問題のネットショップについて調べていたら、こんな記事を見つけました。


ニトリが6/17にECサイトをリニューアル、配送計画の自動化を実現へ


ニトリは6月17日、公式通販サイト「ニトリネット」をリニューアルする。大きな刷新点として、輸配送のリソース状況に応じた配送時間枠の提示と配車計画の自動作成を可能とするクラウドサービスを採用。システム上での効率的な配送ルートを自動作成、関係者全員でパソコンやスマホを使っての情報共有などをできるようにする。


ニトリホールディングス子会社で、ニトリの物流業務を手がけるホームロジスティクスが、伊藤忠テクノソリューションズが提供しているクラウドサービス「Mobile Asset Management Service(MAMS)」を宅配サービスの基盤として採用。ニトリはホームロジスティクスを通じ、リニューアル後のECサイトで品質の高い宅配サービスを提供する。

※以下省略

出典 「ネットショップ担当者フォーラム」

https://netshop.impress.co.jp/node/1760


ニトリビジネスモデル
ニトリ企業サイト ビジネスモデルページから転載

もともとニトリは、自社物流網と、自社でシステム開発を行うことにプライドを持った企業です。


ニトリの企業サイトには、自社のビジネスモデルを「製造物流小売業」と銘打ち、説明したページがあります。


 

※同ページより

ニトリでは従来の「製造小売業」と呼ばれる事業モデルに、物流機能をプラス。新たなビジネスモデル「製造物流小売業」を確立させました。価格と品質・機能の追及のため、商品のほとんどはアジア諸国で生産し、製造コストを削減しています。そして、一般には外部へ委託することが多い輸入・通関業務や、保管から流通などの物流業務、チラシ制作などの広告宣伝、さらにはシステムの企画から設計・開発など、すべてをニトリグループで行っています。

 

 

こだわりの「製造物流小売業」たる、ニトリの物流網はとてもユニークです。

例えばニトリでは、海外で商品を生産し、そのまま海外で店舗単位の仕分け、流通加工を行います。

一般的には、日本に持ち込んでから、国内の物流センターで仕分けなどを流通加工を行うわけですが、ニトリでは、人件費の安い海外で仕分け・流通加工を行うことで、物流コストを下げているわけです。


そのイメージをまとめると、このような感じでしょうか。


これまでのニトリビジネスモデル。海外で仕分け・流通加工を行う点が特徴的
これまでのニトリビジネスモデル。海外で仕分け・流通加工を行う点が特徴的

生産管理、WMS(Warehouse Management System 倉庫管理システム)など、システム化されたニトリ流の「製造物流小売業」のなかで、配車業務は人の手で行われていた部分、システム化から取り残された部分だったのでしょう。




そして、今回のネットショップ・リニューアルによって、本来は下記のように、配車業務を含め、縦串管理のできる業務システムが完成するはずだったのだと考えられます。


これからのニトリビジネスモデル
リニューアル後、これからのニトリビジネスモデル(推測)。ネット販売に特化した物流センターの構築と属人化を廃した縦串システムに特徴がある。

ネットショップでの注文が、そのまま配送(配車)計画へとつながる仕組みであり、また配車計画は、シームレスにWMS、生産管理や、需要予測へと連携する様子。

 

また、これまで海外で行ってきた仕分け・流通加工の一部、特にネットショップ管轄の作業に関しては、国内に移管することを計画していることと考えられます。

 

昨年12月24日に発表されたリリースでは、神戸市と埼玉県幸手市に、合計約7万坪の物流センターを新築することが明らかになっています。ニトリ側では、この物流センター拡充の目的のひとつを、堅調なネット販売に対応するためとしていました。

ここまで来ての不具合....、悔しいでしょうね。

 

不具合の原因や考察は、今後明らかになっていくものと思いますが、おそらくは各システムとの連携に原因があるのではないでしょうか。

 

2002年、みずほ銀行再編時に発生したシステム障害事故を例にするまでもなく、異なるシステムの連結、統合は、大きなリスクを伴います。

今回ニトリのネットショップにおける目玉であった、配送計画システムは、伊藤忠テクノソリューションズのパッケージシステムであり、当システム自体に大きな不具合があったとは考えにくいかと思います。

システム連携のどの部分が原因であるのかまでは分かりませんが、本件不具合の主因は、おそらくはシステム同士の連携あたりにあることと推測します。

 

 

以下、私見です。

 

ニトリがこだわる、言わば「自前主義」とも呼べるポリシーは、得難くも勇気のある決断であり、結果もきちんと求めることのできる素晴らしいポリシーであると考えます。

 

何故か?

端的に言えば、自前主義は、部分最適化に惑わされることなく、全体最適化を目指すことのできる方法だからです。

 

詳しい説明は割愛しますが、システム導入というのは、部分最適化の最たる行為であると、僕は考えます。

それ故に、システム屋の多くは、全体最適化を疎かにしがちです。

例えばSAPのような巨大&高額システムを導入しても、会社の生産性向上につながらないケースは、システムを過信し、システム導入 = 部分最適化であることに気が付かなかったことに原因があることが間々あります。

 

自社でシステムの導入を含めた事業全体の舵取りを行う自前主義は、システム導入という派手なアイコンに惑わされず、全体最適化を目指すことのできる可能性を高めます。

 

自前主義は、「考えることをアウトソーシングしない」主義でもあるので、全体最適化の可能性を高める効果を発揮するのは、当たり前といえば当たり前なんですけどね。

 

しかし、自前主義にも難点はあります。

ひとつは、経験値が稼げないこと。数多くのお客様を手がけ、成功も失敗も経験してきたシステム屋と比べれば、自社内でのシステム構築経験しか得られない自前主義は、経験値の蓄積において、大きな、大きすぎる差が生まれてしまうのはやむを得ません。

 

 

ニトリにおけるネットショップの不具合発生。

そして、6日が経過する現在においても、未だ解消に至らない事実。

 

きっと、リリース前のテストが足りなかったのでしょう。

そして、テスト仕様の策定は、システム開発工程のどのプロセスよりも、システム開発のノウハウであり経験値を必要とする制作工程なのです。

 

 

ニトリさん、早くネットショップ復活してくださいね。

実は自分、先日購入した貴社の夏用敷き布団カバーが大変気に入りまして。

 

ネットで購入しようとしたら、今回の騒動に行き当たったわけです。

しばらく店舗にお伺いする隙がないんで、ホントお願いします

( ̄。 ̄;)

 

 

※本記事には、筆者の推測が多く含まれています。その点ご賢察のうえ、読者皆さまのご参考になれば幸いです。




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