2014年4月19日付のプレスリリースで、楽天物流は親会社である楽天に吸収合併されることが発表されました。
これは、楽天物流、ひいては楽天における物流戦略の「敗退」の証なのか?
僕なりに考えてみたいと思います。
1.合併の目的
(略)
今回の組織再編により、『楽天スーパーロジ』を含む楽天物流株式会社の物流サービス関連資産を当社に吸収することで、『楽天市場』等の当社各サービスと一体化した効率的な物流サービスの運営・提供が可能となり、取引先、ユーザーの多様な物流サービスのニーズに応える体制を構築することを目指します。
※http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2014/0419_01.html
なんのことだかさっぱりわかりませんね(笑
ただし、プレスリリースには、以下のようにも記載されています。
(2) 合併方式
当社を存続会社とする吸収合併方式で、楽天物流株式会社は解散いたします。
なお、楽天物流株式会社は現在、債務超過となっており、本合併に先立ち、当社が楽天物流株式会社に対して保有する債権を放棄し、債務超過の状態を解消する予定です。
同プレスリリースにも掲載されているとおり、平成25年12月期の楽天物流の決算は、売上:64.2億円に対し、経常:△39.5億円の赤字。家電メーカーの赤字額に比べれば、微々たるものとも見えますが。
なお、同時にリリースされた「取引様向けQ&A」には以下記載があります。
Qus.
債務超過により事業を縮小されるのでしょうか?
Ans.
物流事業はインフラやシステムへの先行投資により現時点では債務超過となっていますが、店舗様向けのサービスである楽天スーパーロジは多くの店舗様からご支持をいただいており、順調に取扱件数を伸ばしております。この成長ペースをさらに加速しながら、原価低減に努めることで黒字化させる計画となっております。従い、事業の縮小は考えておりません。
債務超過の原因は、「インフラとシステムへの先行投資」であると。
ところで、楽天物流は2013年11月時点で稼働中の市川2拠点、柏1拠点に加え、加西(兵庫)と、市川新拠点、東北、中京、九州の計8拠点に物流センターを開設予定であることを発表しました。
ところが、2014年2月14日、2013年度通期の決算説明会にて、突然稼働開始から5ヶ月ほどの柏物流センターを閉鎖することを発表します。加え、東北、中京、九州の物流センター稼働計画も放棄します。
この経緯については、ITproにて詳細な記事があります。
参考:楽天は物流投資に消極的になったのか、拠点“半減”が意味するもの
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140217/537150/
そしてその二ヶ月後、楽天物流の吸収合併が発表される。
決算発表で物流センターの閉鎖と開設計画の見直しを発表しておきながら、その二ヶ月後に会社の吸収合併(解散)を発表。
つまり、この二ヶ月の間に、物流センター計画の見直しによるリストラ策を上回るインパクトが生じたと考えるべきでしょう。
これじゃないですか?
2014年3月12日 日経新聞朝刊一面:
「ヤマト一斉値上げへ 法人向け、物流も脱デフレ」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ110C4_R10C14A3MM8000/
「値上げ幅は少なくとも数%」と報じられていました。
楽天物流は、自社車両を持たない、ノンアセットタイプの物流会社。物流センター、物流加工でいくら工夫しても、物流会社である以上、最終評価は良くも悪くも配送能力で決まります。
戦略、実務両面で関係の深かったヤマト運輸の運賃値上げが、事業黎明期で、まだ地力のない楽天物流にとどめを刺したのではないでしょうか?
まだ、"楽天物流の吸収合併は「敗退」なのか?"については、次回、その収益力の分析とともに書きたいと思います。